一般的に高分子鎖は、糸がぐしゃぐしゃに絡まり合ったようにして存在しており、潜在的に有している特性を生かし切れていないのが現状です。もし、高分子鎖の絡み合いをほどいて、精密に配列させることができれば、力学物性、光学特性、異方性において優れた材料を産み出せるはずです。私たちは、MOFの内部では高分子鎖の配向方向が規制され、チャネル状空間に沿って存在することに着目しました。もし、その状態を保ったままMOFの鋳型を取り除くことができれば、空間の次元性に応じて、高分子の集積構造を制御することができます。実際、MOFの一次元空間から単離した高分子は、鎖が高度に配向した状態で得られ、高い結晶性や伝導性を示しました。二次元空間内で架橋重合を行うことで、一分子の厚みしかない高分子超薄膜の合成にも成功しました。MOFの細孔内に異種高分子を取り込み、その鋳型を除去するという非平衡的なアプローチにより、普通は混ざらない高分子同士を分子レベルで混ぜることも可能にしました。
二次元状ナノ空間を鋳型にすることで、これまでで最も薄い高分子シートを創製
[代表的な研究成果]
Fabrication of Two-Dimensional Polymer Arrays: Template Synthesis of Polypyrrole between Redox-Active Coordination NanoslitsAngew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 9883-9886.
Highly ordered alignment of a vinyl polymer by host–guest cross-polymerization
Nat. Chem. 2013, 5, 335–341.
Mixing of immiscible polymers using nanoporous coordination templates
Nat. Commun. 2015, 6, 7473.
Unimolecularly Thick Monosheets of Vinyl Polymers Fabricated in Metal–Organic Frameworks
Nat. Commun. 2020, 11, 3573.